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木曜日, 12月 3, 2020

単独行、むしろ恵みの時間

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山梨英和大学 宗教主任 洪 伊杓

「この恵みは、聖なる者たちすべての中で最もつまらない者であるわたしに与えられました。わたしは、この恵みにより、キリストの計り知れない富について、異邦人に福音を告げ知らせており、すべてのものをお造りになった神の内に世の初めから隠されていた秘められた計画が、どのように実現されるのかを、すべての人々に説き明かしています。」(エフェソの信徒への手紙3章8〜9節)

  昨年5月5日、北アルプスの燕岳山上で朝を迎えました。日の出と富士山が目に入りました。1年後、今年の春には日本アルプスのすべての山荘はがコロナのため閉鎖され、燕岳山上も誰も登れず、寂しかったでしょう。燕岳に一緒に行った友人が加藤文太郎という人物を教えてくれました。日本の山岳人から最も尊敬されている人物。神戸造船所の労働者だった彼は、六甲山脈縦走を経験した後、北アルプス縦走にも挑み、1925年に初めて登った山が燕岳でした。以後、冬山として最初に挑戦したのが今私がいる山梨の八ヶ岳連峰でした。

019年5月6日、燕岳山頂で日の出と富士山の方を眺めている筆者

なぜ彼が尊敬されるのか、二つの理由が考えられます。加藤は欧米人が勧める登山靴を履かず、労働者の「地下足袋」を履いて山を歩きました。先端装備で武装し山を征服する高慢な姿勢ではなく、山に畏敬の意を表し謙遜に歩いた人でした。彼は3000mのアルプスを経験しながらも、若い時に自分を鍛錬してくれた神戸の高取山にも度々登りました。328mの低い山であっても彼にとってアルプスと変わらない偉大な山でした。

  そして彼はいつも一人で山に登りました。まるで「神の前で我々は皆主体性を持つ単独者である」と述べた思想家キルケゴールのように、彼は山に対して常に独りで向き合いました。1929年の正月に八ヶ岳の赤岳山頂に立った彼は次のように自問自答を繰り返しました。

「今日は元日だ、町の人々は(…)嫌になるほど正月気分を味わっていることだろう。(…)それだのに、なぜ僕は、ただ一人で呼吸が蒲団に凍るような寒さを忍び、凍った蒲鉾ばかりを食って、歌も唄う気がしないほどの淋しい生活を、自ら求めるのだろう。」(加藤文太郎著、『単独行』、1928年12月31日~1929年1月3日、八ヶ岳単独行より。)

怖くて不安ばかりでも、彼にとっては山が友であり、慰めであったに違いありません。孤独な山道を歩いた加藤は、結局30歳という若さで槍ヶ岳登山中に遭難し天に召されました。

  彼の登山記録や文章は死後『単独行』(1941)という遺稿集になりました。富士山頂の観測所で働いていた新田次郎は、真冬に一人で登る加藤との出会いを小説『孤高の人』に記し、その他にも『単独行者:Alleingänger』という評伝が発表されるほど、加藤は現代の日本山岳人たちに勇気を与える精神的な柱となりました。1960-70年代に日本人がエベレストなどヒマラヤ山脈を登り始めた時も加藤の存在が大きかったことでしょう。故郷の高取山が加藤の励ましになったように。

燕岳からの日の出と富士山 ©燕山荘 Enzanso Group

  コロナのため私たちは部屋で独りになる時間が増えています。辛く寂しい一人の山歩きのような日々です。こんな私たちに、投獄され孤独な時間を過ごしたパウロは今日のみ言葉を伝えています。ローマ帝国市民としての特権を捨て、キリストの福音を伝え始めて受けた試練… それでも彼が語るのは「恵み」です。それは天地を創られた「神の内に世の初めから隠されていた秘められた計画」、つまり、独りの人間としてこの世にイエス・キリストが来られたということです。十字架の死を覚悟し、最も孤独な生を歩んだ人。「単独行者としての人間イエス」と向き合う時、私たちも「孤独な一人」として前に立たされます。皆さんは孤独な人間イエスと出会い、この時を「恵み」の時として過ごしていければと願います。登山家、加藤のように私たちの孤独な姿も誰かの慰めになるかもしれません。

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